株式会社キッツ(以下、キッツ)は、バルブ製造をはじめとする流体制御機器のグローバルメーカーです。この記事では、代理店をはじめとする外部パートナー向けのデジタルサービス展開を支える統合ID管理基盤として「Tactna」を採用した背景から実現に至るまでの詳細をご紹介します。


01 | 背景と課題:外部ID管理の「鮮度」と「乱立」が招くリスク

バルブ製造をはじめとする流体制御機器のグローバルメーカーであるキッツは、中期事業戦略として外部パートナー(代理店等)へのデジタルサービス展開を本格的に推進するフェーズに入っていました。その第一弾が「検査成績書発行システム」の展開です。しかし、社外ユーザーを対象としたシステム展開には、社内システムとは異なるリスクが存在します。キッツが抱えていた課題は以下の3点でした。

課題 1 社外ユーザーの異動・退職をキャッチアップできないリスク

社内従業員と異なり、代理店担当者の人員変動情報をリアルタイムに把握することは困難です。退職者のアカウントがシステム内に放置されたID、いわゆる「ゾンビID」が悪用されることで、不正アクセスや顧客情報漏洩につながるリスクが問題として考えられていました。

課題 2 複数システム乱立による運用コストとUXの悪化

アプリケーションごとに個別のID基盤を構築すると、開発・運用コストが増大するだけでなく、ユーザー側もシステムごとに異なるID/パスワードの管理を強いられます。利便性・セキュリティ双方の観点から、横断的な統合ID基盤の必要性が明確でした。

課題 3 外部パートナーに「セキュリティの安心感」を提供する

代理店や取引先にとって、「キッツのシステムは安全に使える」という信頼感は、継続的な関係構築の前提です。しかし当時は、MFAや運用ポリシーなど近年のスタンダードへ追随するようなIDセキュリティの標準的な基準を統一的に実装・提示できる仕組みがありませんでした。

02|Tactnaの採用:必要機能へのフォーカスと高いコスト予測性

ID管理基盤の選定にあたり、当初はグローバル企業が提供するSaaSソリューションも候補に挙がりました。しかし、それらは機能が豊富である一方、キッツの要件では使用しない機能も多く、コスト面で課題がありました。その中で選定されたのが「Tactna」です。選定の決め手は以下の点です。

  • 要件へのジャストフィット
    共通アカウント管理・OIDC認証連携など、必要なコア機能を過不足なく実装できる
  • 導入スピード:
    認証認可だけでなくユーザーライフサイクル管理を備えているものの、提案時で約3か月で導入完了を予定できた
  • アクティブユーザー課金:
    セルフサインアップ環境でも予算管理が容易。登録数でなく「実際に使うユーザー数」に基づく支払いが可能
  • エンタープライズグレードのセキュリティ標準:
    MFA・パスワードポリシー・アカウントライフサイクル管理を組み込み済みで、外部パートナーへの「安心感の可視化」が可能

03|サプライチェーン向けセキュリティ対策の先進的な取り組み

キッツの取り組みは、単一システムへのID管理導入にとどまりません。今後増えていく外部向けデジタルサービスを見据え、認証・認可・アカウント管理を共通化し、サービス拡張時にも同じセキュリティ水準を維持できる基盤を先行整備した点に特徴があります。

■ユーザー側への権限委譲

Tactnaが提供する管理者ポータルを活用することで、ユーザー企業/組織に「管理者」を設置し、ユーザー側が自身でユーザーの追加や棚卸しを実現しました。この機能により、提供会社の業務担当者ではなく、ユーザー側に権限を委譲することにより、キッツ社内の運用担当者の業務負担を軽減することが可能になります。

■アカウントライフサイクル管理(鮮度管理)

また、代理店が適切にID管理を行っているかの管理においては、パスワード変更を定期的に行うことや、非アクティブアカウントの停止、月末の棚卸し作業を実現しました。これらの仕組みにより、放置アカウントによるセキュリティリスクの低減を実現するとともに業務効率の向上を実現いたしました。

  • パスワード変更要件: 90日間変更がない場合、自動通知およびワンタイムパスワードによる再設定を要求
  • 非アクティブアカウントの停止:全てのユーザーはルールに基づき、アプリに一定期間未ログインの場合、ユーザーに通知後、自動でアカウントを停止状態とする。
  • アカウント棚卸:アカウント停止から数日後にアカウントを完全削除

04  |  導入効果(圧倒的な効率化とコスト削減)

統合ID管理基盤の導入と自動化された棚卸プロセスにより、セキュリティの強化と同時に高いビジネスインパクトを達成しました。

評価指標導入効果(数値インパクト)
サプライチェーンの安全性確保Tactnaの導入後約30%がゾンビIDと判明。その後ゾンビIDの放置をゼロ化。社外パートナーの安全な利用環境を整備
ID管理・ユーザー棚卸業務の効率化業務工数の約70%削減を達成
(一元化・自動化による)
新規アプリ追加時の開発コスト削減追加開発コストを約60%削減見込み(統合ID基盤の活用)

■お客さまからのコメント

「外部向けシステムを拡充するにあたり、ID管理の仕組みを最初にきちんと設計しておくことが重要だと考えていました。複数のソリューションを比較検討しましたが、私たちが本当に必要な機能に過不足なくマッチしていたのがTactnaでした。

棚卸業務の自動化によって、以前はアプリごとにバラバラに行っていた作業が一元化され、担当者の工数は体感でも約7割減と明らかに減っています。さらに、定期的なID棚卸とライフサイクル管理が自動化されたことで、利用実態のない外部IDを継続的に検知・整理できるようになり、セキュリティガバナンスの強化と監査対応の効率化にも貢献しています。」

ーITインフラサービス部 ITデジタルプラットフォームグループ グループ長 守屋 仁様

「認証・ID管理は専門性が高く、当社にとって初めて取り組むシステム間連携もありました。Tactnaは、認証・ID管理の各プロセスに、企業ごとの業務ルールや既存システムとの連携処理を柔軟に組み込めるため、当社側のアプリケーション基盤の仕様に合わせた連携を実現できました。TC3様には、連携方式の検討から必要な実装まで対応いただき、社内外の関係者と認識を合わせながら、要件整理からリリースまでスムーズに進めることができました。」

ーITインフラサービス部 ITデジタルプラットフォームグループ 山田 一樹様

05|今後の展望:10万人規模への展開と、人事システムとの完全自動連携

キッツは今回構築したID管理基盤を起点に、他環境やJavaベースの既存アプリを含む全社的な外部向けプラットフォームへと適用範囲を拡大していきます。将来的にはキッツが抱えるサプライチェーン10万人規模のユーザー展開を視野に入れています。

次期フェーズでは、代理店を中心としたサプライチェーン向けのサービスを拡充し、その統合ID管理基盤を目指します。また、タレントマネジメントシステムなどの外部人事システムとの自動データ連携や、契約の締結・終了をトリガーとしたアカウントの自動登録・削除により、より高度なサプライチェーン・ガバナンスの実現を目指します。

06|おわりに

今回、B2B向けのサービスを中心に組織の概念を導入した認可構造の実現においてTactnaは非常にマッチすると感じました。サイバー攻撃の増加傾向を背景に経済産業省が主導し2026年度末から運用開始予定の「サプライチェーン強化に向けたセキュリティ対策評価制度(SCS評価制度)」にも対応する上で認証認可・ID管理への対策は自社だけでなく、関係会社への適用も重要になってきています。このような点でキッツにおける取り組みは非常に先進的なものであると感じており、サプライチェーンのIDライフサイクル管理をセキュアに効率よく実現できるプラットフォームとしてTactnaを進化させていけるよう努力してまいります。

07|Tactnaについて

Tactnaは、複数サービスの展開、B2Bサービスの展開におけるアイデンティティ領域のコントロール機能を提供するカスタマーエンゲージメントハブです。グローバルの標準に準拠した認証認可機能を内包し、B2Bに必要とされる組織概念の実装が可能です。

また、サービス展開に必要となるユーザー向け、業務向けの管理画面を提供し、柔軟な要件にも対応可能で様々な業態にご利用頂けます。Tactnaを活用することで、セキュアかつユーザー体験の高い機能をスピーディに実装すると同時に、業務効率化を実現することが可能です。

Tactnaについての詳細は以下URLよりご確認ください。
https://tactna.com