早い時期からDXを進めている企業から、顧客向けのサービスを作ってリリースしたはいいものの、流入がない、ユーザーが定着しない、ログインIDが別々なのでクロスセルに繋がらない。といった課題を耳にします。

これからウェブサービスを作り自社商品の価値を効果的に外に伝えるなら、そういった過去の事例から学び、より品質の良いサービスを目指すと良いでしょう。

そこで今回は、顧客むけの新規サービスを開発するうえで考慮が漏れがちな「ログイン体験」にクローズアップして考えていきたいと思います。

ログイン体験が企業に与える影響

ウェブサービスを媒体として商品の購入に結びつけるためには、ID登録・ログインは避けては通れないステップです。

とはいえログインはビジネスのコアではないため、まずは付け焼き刃な作りでリリースしてしまうのが従来のやり方です。

そして同企業の別の事業部が新たなサービスを作る際、再度ID登録・ログイン回りの仕組みをそのサービス専用に作ることが一般的です。

なぜなら事業部間の依存が無い方が調整がスムーズで、リリースまでのスピードが早くなるからです。それは限られた予算の中、最短距離でサービスを作る良い方法に思われます。これは非常に内向きな視点でのプロジェクトの進め方であり、顧客体験の向上を目指すのであれば、顧客視点に立ったサービス設計が必要です。

ユーザーからすれば、同じ会社のサービスにも関わらず再度ID登録・ログインのハードルを強いられていることに他なりません。もしそういった仕組みを全社で共通化できていたならば、ユーザーは再ログインすることなく新しいサービスを使えたことになり、初期の流入数向上、離脱率低下に良い影響を与えたでしょう。

現実にはKPIは事業部ごとに作られ、企業全体から見れば後者の仕組みが最適解にもかかわらず、前者が選択されています。そうしてユーザー数が思ったように増えず採算が合わなくなり、サービスとそこに登録してくれていたユーザーもろとも消えてしまいます。どれだけ魅力のある商品があっても、それを届けるウェブサービスが企業の足を引っ張っている状況が今の少なくない企業が抱える問題です。

一方、ID基盤を統一するのではなくGmailを使ったソーシャルログインを各サービスに個別に導入することも考えられます。数クリックでユーザー登録でき、ログインもGmail経由のSSO(シングルサインオン)になるので、顧客体験に与える影響は少なそうに見えます。ですがその後に待ち受ける、住所やクレジットカードの登録をサービスごとにするハードルを避けることはできません。それもAmazon PayやPayPalなどと連携できれば多少楽にはなりますが、このままいきあたりばったりの対応を各事業部ごとにバラバラに続けることは良い判断とは言えないでしょう

なぜならユーザー体験から来る企業への信用は、案外軽視して良いものではなかったりします。同じ企業名を冠したサービスにも関わらず、ユーザーIDとパスワードが複数混在している、支払いへの導線が違う、ユーザー情報の変更がサービス間で連携されないといったフラストレーションが積み重なるにつれ、企業に対する信用が落ちるリスクは避けられません。FIDOアライアンスのレポートによれば58%ものユーザーがパスワード管理に起因して購入をやめたことがあると回答しています。

参考: ユーザー体験とセキュリティを両立するためのテクノロジーPasskey紹介
https://info.tc3.co.jp/passkey-presentation-securityweek2023winter

さらに3年先の課題を予測

上記が過去の事例から学んだ教訓だとしたとき、さらにこの教訓をもとに作られるウェブサービスの3年後を想像し、それが過去の事例として紹介されるとしたらどういったものになるでしょうか。きっと、IDaaSをベースにし統合されたID基盤を導入した企業であっても、ユーザーの流入がない、ユーザーが定着しない、ユーザーがいないのでクロスセルに繋がらないと同じような課題で悩んでいることでしょう。ですが今と違うところは、ユーザー体験が一本化され効率的に改善する基盤が整っているため、企業は本質的な価値向上に力を入れられるようなっているという点です。この取り組みは長期視点で企業の価値を高めていくものなのです。

さらに別の視点から、3年でID回りの仕組みは大きく変わるということを知っておくと良いでしょう。それはFIDO/W3CのPasskeyやOpenIDのCIBAといった標準技術を活用したログイン体験の向上、プライバシー保護の高まりから来るSSI(自己主権型アイデンティ)への対応、WCAG(Web Content Accessibility Guidelines)に代表される万人のためのウェブコンテンツ提供といったことが普及していくということです。ユーザーのITリテラシーは技術の発展・普及と共に高まり、企業に求められる水準は高くなっていきます。作って終わりではなく、ログイン体験を維持するためには常に改善をしていく必要があります

たかがIDされどID… 企業の価値を最大限社会に提供するためにログイン体験の維持・向上は欠かせません。

要点

  • ID回りの機能はビジネスのコアではないが、軽んじていると企業価値損失に繋がる
  • 全社横断の共通化された仕組みを用意すれば、ユーザー体験が向上し流入数の増加や離脱率の低下につながる
  • ウェブサービスは常に改善し続けなければ廃れていく

ソリューションサービスのご紹介

上記の課題を解決するにはIDaaSだけではなく、組織やアプリケーションの管理、上に書いたような支払機能の共通化、サービスを跨いだ情報の共有などが必要とされます。TC3はOkta CIC(Customer Identity Cloud)を代表とするIDaaSを活用したデジタルサービス開発のプロフェッショナルです。

すでに実践的に設計・実装された基盤を用いることで、事業部やサービス間の調整を減らし、リリースまでの期間を早め、ユーザー体験を向上させるといったメリットの多い開発プランをご提供します。

トライアル・MVP開発の段階から、どのようにIDaaS/CIAMを導入するかについてもサポートさせていただきますので、お気軽にお問い合わせください。

詳しくはデジタル顧客接点トータルサービスをご覧ください。

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